遠藤周作原作の映画「沈黙」をめぐって、色々な意見があるようです。特にクリスチャンの方からは批判的な意見が多いようですが、それらの意見を読みながら、2つのことを考えさせられました。先週は「踏み絵」について書きました。今日はもう一つの事を書きたいと思います。
ロドリゴの葛藤
原作しか読んでいませんので、映画ではどのように表現されているのか分かりませんが、すでに棄教を誓ったにもかかわらず、宣教師ロドリゴが棄教しない限り、その日本人信者たちの拷問が続けられることを知って、苦しむロドリゴの心の葛藤が「沈黙」の中心的なテーマではないかと思います。
棄教によって人々を救う
自らの棄教という犠牲によって、苦しむ人々を救うべきなのか。ついにロドリゴは踏み絵を踏むことを受け入れます。その時、踏み絵のイエスが「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ。」と語りかけます。
立派なことだと思います
新約聖書に含まれる多くの手紙を書いたパウロという人は、ローマ人への手紙の中で、「もしできることなら、私の同胞、肉による同国人のために、この私がキリストから引き離されて、のろわれた者となることさえ願いたいのです。」と書いています。自らの棄教という犠牲によって、苦しむ人を救うことは、究極の選択だと思いますが、立派なことだと私は思います。
私の心配
ところが、これを非難するクリスチャンが意外と多くいることに驚かされます。と同時に、私は怖くなります。自らの信念のために、自らの命が奪われることがあっても、そういう生き方もあると私は思います。しかし、自分の信念のために、他人が殺されても構わないと考えるとすれば、その人の良心は一体どうなっているのだろうかと心配になります。
「宗教」か、「良心」か
しかし、「宗教」には、そういう側面があって、紛争やテロを引き起こす原因となっているのではないかと私は思います。クリスチャンの中には「宗教」よりも「良心」を優先することはヒューマニズムだと非難する方もいらっしゃるようですが、そうではないと私は思います。ヒューマニズムとは人間中心主義のことであり、人間の都合で善悪を曲げても良いという考え方であろうと思いますが、「良心」に働きかけられる神様の声に従うことは決してヒューマニズムではないと思います。
「宗教」ではなく、神様を中心にする
大切なことは「宗教」をやることではなく、「良心」に語り掛けられる神様の声に従うことだと私は思います。「宗教」は世界に分裂をもたらしますが、神様は一致をもたらします。自分のことだけでなく、人のことを思いやること、人のために何かをしてあげること。それは神様に喜ばれることであり、神様を中心にして生きることだと思います。そこに人間の全ての問題の解決があると私は思います。
聖書を読みましょう
それでは今日も聖書の続きを読みましょう。聖書は神様を中心にして生きようとした人たちの記録であり、実は私たち日本人の信仰のルーツでもあります。キリスト教の教典としてではなく、神様を中心にして生きるために聖書を読んでいただきたいと思っています。
新約聖書 マタイの福音書 3章5~10節
さて、エルサレム、ユダヤ全土、ヨルダン川沿いの全地域の人々がヨハネのところへ出て行き、自分の罪を告白して、ヨルダン川で彼からバプテスマを受けた。しかし、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けに来るのを見たとき、ヨハネは彼らに言った。
「まむしのすえたち。だれが必ず来る御怒りをのがれるように教えたのか。それなら、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。『われわれの父はアブラハムだ』と心の中で言うような考えではいけない。
あなたがたに言っておくが、神は、この石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです。斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。
多くの人がバプテスマ(全身を水に浸す宗教儀礼)を受けた
バプテスマのヨハネの評判を聞いて、多くの人が集まって来たのでしょう。「罪」とは必ずしも犯罪だけではなく、自己中心のことだと私は思いますが、自己中心で良心の呵責を覚える人はたくさんいたのではないでしょうか。その中にはパリサイ人、サドカイ人といったユダヤ教の指導者たちも含まれていました。
「まむしのすえたち」
ヨハネはそのような宗教家に向かって「まむしのすえたち」と言いました。これは宗教の問題ではない。「アブラハムの子孫」とはユダヤ人ということでしょう。ユダヤ人だから大丈夫ということでもない。大切なことは「悔い改めにふさわしい実」、つまり本当に自己中心を止めて、神様を中心にして生きることだと教えたのではないでしょうか。それを神様は良しとしてくださるのだと思います。
いかがでしたか
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